スパイ行為に関するアディーレの言い分に対する反論

弁護士法人ベリーベスト法律事務所
元代表社員
弁護士 酒 井  将
(業務停止中)
  • 1 はじめに

    令和2年7月3日付けで、弁護士法人アディーレ法律事務所(以下「アディーレ」といいます)の代表社員である鈴木淳巳弁護士が「酒井弁護士及びベリーベスト法律事務所の一連の主張について」と題するウェブページを公開しましたので、これに対する私の反論を公開することといたしました。

  • 2 スパイ行為の存在について

    弁護士法人アディーレ法律事務所(以下「アディーレ」といいます)は、「スパイ行為などある訳もなく」「証拠があると言いながら証拠が一切提出されておらず、事実無根です。」「このように事実無根の主張をすることは、名誉毀損にあたります。」と主張しています。 そこで、私がアディーレ及び元代表社員である石丸幸人弁護士(以下「石丸弁護士」といいます)に対して起こした令和元年9月20日付け懲戒請求事件(令和1年東綱第426号・令和1年東綱法第8号)にて、甲第5号証として提出した私の陳述書を公開します。この陳述書では、スパイ行為についてある程度詳細な経緯を述べています。アディーレは、証拠がないと言いますが、私は、現時点において、甲1号証から、甲17号証までの証拠を東京弁護士会の綱紀委員会に提出しており、この中には、公開は控えますが、実名でアディーレのスパイ行為の存在を証言している弁護士の陳述書(甲1号証)やアディーレ関係者等との間の生々しいメールのやりとり(甲13号証乃至甲17号証)もあります。アディーレは、一切その証拠が届いていないと言いますが、明らかな虚偽です。

  • 3 名誉毀損にあたらないこと

    公共性があること・目的に公益性があること・真実である又は真実相当であると認められるの3つの要件を満たすため、名誉毀損にはあたりません。

    • (1)公共性があること

      アディーレは、日本で最も支店の数が多く、テレビやラジオ・インターネットでのコマーシャル活動を通じて知名度の高い弁護士法人です。債務整理事件を中心に一般消費者の民事案件を多数取り扱っています。したがって、アディーレに関する事実の摘示が公共性の要件を満たすことは明白です。

    • (2)目的に公益性があること

      弁護士ともあろう者が、産業スパイを送り込んで、不正に資料を入手し、スパイをして公益通報を装って、弁護士法人ベリーベスト法律事務所(以下「当法人」といいます)を懲戒請求するということは、不正競争防止法違反として刑事罰の対象となるばかりか、弁護士職務基本規程第70条・71条にも違反し、弁護士の守秘義務に対する重大な脅威であることは言うまでもありませんから、これを公表する目的に公益性があることは明白です。

    • (3)真実性・真実相当性を満たすこと

      甲第5号証の私の陳述書から明らかなとおり、アディーレが当法人にスパイ行為を行ったということは、複数の関係者の証言等から優に証明できます。したがって、真実性あるいは真実相当性の要件を満たすこともまた明白です。
      以上により、私の主張が名誉毀損にあたらないことは明らかです。

  • 4 不正競争防止法の「秘密」に違法秘密が含まれないとの主張について

    当法人は冤罪であり、非弁提携行為など存在せず、このことは、「日弁連への審査請求書」にて詳述している他、YouTubeでも動画(前編)(後編)を公開しています。そもそも非弁提携行為の有無にかかわらず、弁護士または弁護士法人ともあろう者が、他の法律事務所に産業スパイを送り込むなどということは、弁護士職務基本規程第70条・71条に違反し、いかなる理由があっても正当化されるものではなく、これが弁護士法56条1項に規定する「品位を失うべき非行」にあたることは明白です。

  • 5 鈴木淳巳代表社員に対して懲戒請求していないこと

    私は、アディーレ代表社員である鈴木淳巳弁護士に対して懲戒請求していません。懲戒請求したのは、アディーレと、スパイ行為を指示したアディーレの元代表社員である石丸弁護士です。動画で「代表弁護士」と述べたのは、「元代表弁護士」の誤りでしたので、訂正するとともに、鈴木淳巳弁護士に謝罪いたします。 動画の概要欄にて、「20分50秒の『代表弁護士』とあるのは『元代表弁護士』の誤りです。失礼しました。」と表示し、また、私のTwitterでも、「動画の20分50秒で、『代表弁護士』と発言しましたが、『元代表弁護士』の誤りでしたので、訂正いたします。」と表示いたしました。 甲第5号証の陳述書でも記載したとおり、鈴木淳巳弁護士は、スパイ行為に関与していません。 もっとも、鈴木淳巳弁護士は、アディーレの現代表社員であるのですから、アディーレのスパイ行為について、真実を素直に認め、謝罪し、当法人の被った損害を賠償するなどして、誠実に対応すべきです(弁護士職務基本規程第5条)。

  • 6 その他の主張について

    その他、アディーレは、当法人が懲戒処分を受けた事案について、縷々述べるので、これらの主張について、簡単に反論しておきます。

    • (1)司法書士法人新宿事務所(以下「新宿事務所」といいます)に対する批判について

      アディーレは、新宿事務所の問題点を複数指摘し、当法人が新宿事務所と提携したことを批判しています。 しかし、まず、指針違反の点は、新宿事務所は事前に司法書士会に指針に拘束力がないことを確認のうえ、報酬の設定に問題がないことを確認しています。また、広告の指摘についても、過払金返還請求権が時効消滅していく中で、消費者に広く意識喚起を狙ったものです。さらに、委任状偽造疑惑については、依頼者の了解を得て代筆した委任状を、裁判官が偽造と判断した判決に対し、新宿事務所が訴訟外で貸金業者と和解して依頼者の過払金を回収したので、控訴せずに確定してしまったものであり、依頼者から委任を受けていないにもかかわらず、過払金の回収を進めたという話ではありません。これらについて、新宿事務所は、司法書士会から懲戒処分を受けているわけでもありません。 そもそも、新宿事務所に依頼した依頼者にはなんら落ち度はないのですから、司法書士の代理権を超えてしまって新宿事務所に依頼を継続できない依頼者の救済のために、当法人が事件を引き継ぐことが責められるいわれなどなく、新宿事務所の評判とは関係がありません。 次に、アディーレは、「本来であれば取扱いできない依頼者について、収益化できることによって、広告費を圧倒的に増額できる」などと主張します。この点は、「日本弁護士連合会への審査請求書」52頁23行目~54頁14行目等でも主張していますが、司法書士は、司法書士法に基づき、過払金の金額を調査し、また、訴状等の裁判書類の作成ができるので、これについて依頼者に対して司法書士報酬を請求できる立場にありますから、「本来であれば取扱いできない依頼者」というのは明らかに誤りです。なお、アディーレは、「過払金返還請求事件の依頼者のうち、5割が司法書士の取扱いが不可能な140万円を超えると仮定する」などと述べた上で、新宿事務所の収支構造を推論していますが、当法人の実績では、過払金依頼者のうち、140万円を超える割合は、せいぜい2割程度であり、悪質な印象操作と言わざるを得ません。

    • (2)業務停止処分の潜脱であるとの主張について

      そもそも弁護士法上、懲戒は弁護士及び弁護士法人を対象としており、法律事務所を対象とするものではありません(弁護士法56条1項)。業務停止処分を受ける可能性について認識した弁護士法人が、「依頼を継続したまま業務停止となって依頼者に迷惑をかける事態」を避けるために、新規の案件受注を停止し、既存の案件についてできる限り早期に解決するとともに、終了しない案件について、同じ法律事務所に所属する他の弁護士あるいは弁護士法人に引き継ぐことは、違法でないことはもちろん、なんら非難されるべきことではありません。アディーレは業務停止となり、依頼者との契約を解除せざるを得なくなった後、依頼者が希望した場合には、アディーレに所属する他の弁護士が、事件を引き継ぎました。アディーレのように業務停止になってから契約を解除するのでは、依頼者を困惑させ、迷惑をかけるので、万が一の事態に備え、依頼者に迷惑をかけないようにしたものです。この点については、日本弁護士連合会への審査請求書59頁19行目~61頁6行目及び日本弁護士連合会への審査請求において提出した酒井の陳述書20頁最終行~23頁6行目・24頁15行目~25頁13行目をご参照ください。 また、アディーレは、当法人が三分割されたと述べますが、これも事実ではなく、懲戒にかかっていない当法人所属の弁護士が新たな弁護士法人を設立したのであり、何ら違法なことではありません。新たな弁護士法人により構成されるベリーベスト法律事務所は、ベリーベスト虎ノ門法律事務所に所属する当法人とは別の組織ですから、一般消費者が誤解しないように、ベリーベスト法律事務所と当法人が別の組織であることをウェブサイトで表示することを非難される言われはありません。同様の表示を、東京弁護士会も掲示しています(東京弁護士会ホームページの該当記事スクリーンショット)。また、アディーレはベリーベスト法律事務所の過去の実績について、下線を付して「不当な誤導、誤認を伴う広告表示」などと強調していますが、ベリーベスト法律事務所という「法律事務所」の実績を示したものであり、過去にベリーベスト法律事務所に所属していた当法人の実績を示すことは、事実を正確に反映したものであって、誤導・誤認を伴うものではありません。アディーレは、弁護士法人と法律事務所の概念を混同していると言わざるを得ません。

    • (3)Legal Mallのドメインについて

      アディーレは、Legal Mallのドメイン保有者が当法人になっているのに、別事務所であるベリーベスト法律事務所の業務広告が表示されているとして問題視しています。しかし、当法人の名前が残っているのは、ドメインのWhois情報上の登録者名であって、ここに当法人の名前が登録されていても、当法人が弁護士業務広告をしていることにはなりません(サイト運営者とWhois情報上の登録者名が異なることは一般によくあることです)。弁護士業務広告をしているのは、あくまでベリーベスト法律事務所を構成しているベリーベスト弁護士法人及び弁護士法人VERYBESTです。なお、Legal Mallの著作権も当法人は保有しておらず、本来であれば、ドメインのWhois情報も変更されていることが望ましいところ、サイト制作を委託している業者のミスで変更が未了であったことが、今般アディーレの指摘で判明しましたので、ドメインのWhois情報を変更いたしました。

    • (4)期間限定表示の延長の繰り返しについて

      アディーレは、当法人が過去に期間限定表示の延長の繰り返しをしたと主張していますが、当法人のそれは、アディーレのように約5年もの長期にわたって繰り返したものではなく、ごく短期間ですから、景品表示法には違反しません。

  • 7 アディーレが提訴及び懲戒請求するとの主張について

    アディーレは、私及び久保田康介弁護士に対して、名誉毀損による損害賠償請求訴訟及び懲戒請求を、また、当法人・ベリーベスト弁護士法人・弁護士法人VERYBEST及びこれらの社員弁護士に対して、懲戒請求を申し立てると主張しています。 しかし、いずれも、以上に述べた理由で、アディーレの主張は認められません。理由のない提訴や懲戒請求は、別途不法行為を構成する可能性がありますから、仮に、アディーレが提訴及び懲戒請求をした場合には、私たちは、アディーレ及び代表社員鈴木淳巳弁護士に対して、反訴及び懲戒請求をいたします。 とりわけ、代表社員鈴木淳巳弁護士については、本件スパイ行為に関与しておらず、これまで懲戒理由などなかったのですから、老婆心ながら、新たな懲戒事由を発生させる行動は厳に慎むべきと考えます。